歴史の扉へようこそ。旅人です!
今回は、奈良国立博物館で令和4年(2022)3月27日(日)まで開催中の聖林寺展をご紹介する記事となります。
実際に私も行きましたが、見どころたっぷりで、
歴史ファン・仏像ファンは絶対に行くべき
展示になっていました!
今回のポイントはこちら!
- 今回の目玉:聖林寺十一面観音の何がすごいのか?
- 秀逸な展示構成/ケースなしで見れる最後の機会かも?
- 素敵な図録・御朱印も!
【何がすごいの?】聖林寺十一面観音が貴重な理由
まず、聖林寺展の魅力を語るのに欠かせない議論ですが、そもそも今回の目玉である聖林寺十一面観音の何がすごいのでしょうか。
結論から書くと、
聖林寺十一面観音は、外観が美しいのみならず、大神神社と仏教の関係、ひいては日本の神仏習合のあり方を現代に伝える像
なのです!
どういうことなのか解説していきます。
十一面観音と大神神社
この十一面観音は今でこそ「聖林寺十一面観音」と呼ばれていますが、実は最初から聖林寺にあった仏像ではありません。
ではどこにあったのかというと、
大神神社の神宮寺である大御輪寺の秘仏
でした。
大神神社
大神神社は大国主大神の幸魂・奇魂である大物主大神をお祀りする、一説には日本最古ともいわれる古社です。
第十代・崇神天皇の御代に疫病が流行。大物主大神の子孫である大直禰子(おおたたねこ)を神主にして祀らせたところ疫病が収束しました。
大御輪寺
大御輪寺は大神神社の神宮寺として8世紀に成立しました。十一面観音はこの寺の秘仏だったわけですね。
神宮寺とは、神社の神を仏教により守護するお寺で、「神と仏が一体である」とする神仏習合という思想により成立した日本独自のスタイルのお寺です。
大神神社と十一面観音に共通する「疫病よけ」の要素
十一面観音と大神神社の神との関係はいまだに謎も多いです。
しかし、十一面観音を本尊として行う法会「十一面悔過」には疫病よけのご利益があるそうで、
両者には「疫病よけ」のご利益がある
という共通点があります。(図録p.10参照)
十一面観音が造像された時代にも疫病が流行したのかもしれませんね。
廃仏毀釈の荒波を生き抜いた仏
時が下り、明治政府により神仏判然令が出されると、大御輪寺は受難の時代を迎えます。
廃仏毀釈(仏像やお寺を破壊する行為)の波が押し寄せる中、
大御輪寺の十一面観音は聖林寺へと避難
することとなります。
そのまま大御輪寺は神仏分離により、大神神社の境内社:大直禰子神社となり仏像はそのまま聖林寺に安置されることとなりました。
これまで秘仏として長らく人の目に触れなかった十一面観音ですが、フェノロサと岡倉天心により開扉されました。長らく眠っていた仏像は当時の美しい輝きを保った貴重な像で、国宝に指定されました。
聖林寺十一面観音は、外観が美しいのみならず、大神神社と仏教の関係、ひいては日本の神仏習合のあり方を現代に伝える像
という意味で歴史的にも貴重な像なのです。
三輪山信仰がよくわかる展示構成
今回の展示は、もちろん十一面観音だけではなく、三輪山信仰全体がよくわかる構成になっていました。
三輪山信仰の原点:山ノ神遺跡出土品
三輪山周辺には数々の遺跡が見つかっています。
中でも山ノ神遺跡の出土品は酒造りを示唆するものも多く、大神神社の酒造の神としての側面がかなり古い時代から形成されていたことを示しています。
大御輪寺にかつて一緒に祀られていたみほとけが一堂に会す!
大御輪寺の仏像たちは聖林寺のみならず、法隆寺や正暦寺など様々なお寺に分かれて安置されることとなります。
今回の展示では、それらの仏像が奈良国立博物館に集合!
往時の大御輪寺の様子に思いをはせることができます。
ケースなしで拝観可能な人生最後の機会(かも)!
この展示が終わると、十一面観音は聖林寺に帰るわけですが、聖林寺でもケース越しに拝観することとなるそうです。
そして、この像が寺外に出ることは100年に一度レベルなので、我々が生きているうちにケースなしで直に見ることはできないと思われます。
本当に貴重な機会なので、歴史・仏像ファンは絶対行った方が良いです!
ちなみに東京展ではこんな感じでガラスケースの中で展示されました。
図録・御朱印などグッズも充実!
図録、クリアファイル、御朱印など、お土産も充実!
特に御朱印は十一面観音の光背の柄があしらわれた紫色の紙と半々になった見開きタイプです。
運が良ければご住職もいらっしゃるようで、日付を入れてもらえます。
そもそも御朱印とは?
「そもそも御朱印って何?」という方はこちらの記事もどうぞ。
アクセス
奈良国立博物館
近鉄奈良駅より徒歩15分。令和4年(2022)3月27日(日)まで。
大神神社
JR三輪駅下車。徒歩5分。
聖林寺
近鉄・JR桜井駅より奈良交通バス談山神社行き「聖林寺」下車すぐ。
まとめ
- 聖林寺十一面観音は、日本の神仏習合の歴史を現代に伝える国宝
- ケースなしで十一面観音を見れる最後のチャンス(かも)!
- ご住職がいらっしゃる時は御朱印に日付を入れていただける!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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